愛の手


黒塗りのメルセデスにゆられながら、安全運転をする祐輔さんをみた。


真っ黒のスーツをビシッと着て、髪を全てうしろに流してるのいつものコト。

いかにも、という姿にサングラスをかけているせいか、完璧にそのスジの人になってる。


「どうしましたか、愛理さん。車酔いですか?」

バックミラー越しに目があい、心配かけまいと首を横にふった。

「大丈夫」

そういうと、安心したようにまた運転し始めた。



祐輔さんのヤクザっぽい格好は似合わないと思った。

家にいるみたいにサングラスを外してれば、優しい顔がすぐわかって安心するのに。




毎朝見るこのヤクザっぽい格好は、見るたびにイヤな思いになった。

あたしのダイキライな一味なんだ、って思い知らされるみたいで。