愛の手


「総司さん!?」

隣には総司さんが先に座っていた。



気にするでもなく、総司さんは出発するように命令した。

なんか一緒の車って、居心地が悪い……


イヤなんじゃなくて、緊張していまさらながら、昼食が出てきそう。


出てこなかったのは、ゼロクラウンを静かに運転する周防さんのおかげかな。





「今日はどうしたんですか?」

迎えにきたことがめずらしくて、あたしはつい質問を投げかけた。

「暇だっただけだ。愛理はテスト前か?」

「はい。ほんのちょっと早帰りです」

テストが終わったら、待ちに待った冬休み。


学校いかなくて済む、なんて思ってることがバレないように、顔に力を入れた。


なんでもお見通しなのか、総司さんはふっと息をもらした。

「海にでも行くか」

「え、本当ですか!?」

「テスト期間になる前だしな」


海に連れていくというだけで、こんなにも喜ぶあたしって単純かな?

そんなあたしを見て、総司さんは目尻を下げた。


「そういえば、なんで海いっぱい連れてってくれるんですか?」

海が好きっていった記憶も、なんで海が好きなのかって記憶もあたしにはない。



ただ波の音が好きなのかな。