愛の手


正門まで駆け足で急ぐと、白いゼロクラウンがとまってる。

生徒の邪魔にならないように、ずれたところに。



恐る恐る近づく。

なんで恐る恐るかって?




それはね……


「また正座ですか!!?」

「おかえりなさいませ、お嬢様」


迎え担当になった周防さん。

なにを思ったか、迎える体勢がいつも正座なんだ。


正門だし、コンクリだし、目立つし、やめて!!っていったんだけどね。


「自分のしてきたことへの始末は、懺悔でカタチにあらわす。それが仁義でございます」


周防さんは、思ったら真っ直ぐ、一直線タイプらしい。

根がマジメだから、こうして決めたことは頑として譲らない。


だからあたしがいつも苦労してるわけだ。

「わ、わかったから、はやく車乗るよ」

「承知」


周防さんは立ち上がると、後部座席の扉を開けた。

あたしは逃げるようにゼロクラウンに乗りこんだ。




ふわりと香る、お香の匂い。