愛の手


「春香ちゃんは帰らないの?」

帰る準備を終えたあたしは、座ったままの春香ちゃんを見た。

いっこうに動こうとしない。


「彼氏からのメール待ってるからぁ」

「彼氏……っ!!?」

いまどきの女子高生、って感じの台詞だ。


あたしには縁のない話し。


春香ちゃんは頬を赤らめて、恥ずかしそうにうなずいた。

カワイイなぁ……


恋をすると女の子はキレイになるっていうけど、春香ちゃんは恋してるから、いっそうカワイイんだ。

うらやましいよ。


「今度、話し聞かせてね」

「えー、ノロケ話になっちゃうよ?」

「うん、それでもイイからっ」


あたしは大きく手をふって、またね、っていいながら教室をあとにした。



最近慣れてきたよ。

学校で、またね、って声をかけることに。

まだ話しかけられると緊張するけどね。


人見知りする体質って、面倒だよね。