愛の手


「気がついた?」

暗い部屋に響いた声。


姿を確認したくても、首が動かない。






でもこの声は確実に知ってる声。

幼なじみであり、ずっと一緒に育ってきたヤツの声を間違えるはずがない。


「れ、…ぉ……っ」


切れている口をゆっくり動かすと、やっぱり痛くて眉をひそめた。


近よる靴の音が耳に届く。


しだいに近づく足音。




礼央だけの音じゃない。


複数の、足音。