愛の手


睨みつけるように、あたしを射る瞳。

鋭いその目は、見覚えがある。



「どうし、たの…、礼央……っ?」

あたしは後退りしながら、礼央との距離をたもつ。

追うように近づく礼央。


「ね、ぇ…、礼央…? 怖い、よ…っ」


見覚えのある瞳に、あたしは肩を震わせた。


「い、…たいっ」

力強くつかまれた腕。

こんなときに男の力を見せつけられて、背筋が凍る。



「悪い」

「ん、ンんっ……!?」

あたしは湿ったハンカチみたいなものを口にあてられた。


視界がぐにゃりとゆがむ。

ナニコレ?




うすれていく意識の中で見えたモノ。



礼央の冷たい瞳。

まるで――…




あたしを殴ったヤクザみたいだった。