愛の手


昇降口までいくと、礼央が立っていた。

「礼央ぉーっ」

めずらしくあたしから手をふると、少し驚いたように目を見開いた。


靴を履いてそばまでよると、礼央は不機嫌そうな顔であたしを見た。

「お前さぁ、なんでオレん家こなかったわけ?」

「……ごめん」


礼央の家に引きとられる日、あたしは総司さんに事実を聞いた。

あたしを殴った人たちじゃないってわかった瞬間、どうしようもないくらい、総司さんのそばにいたくなったんだ。


理屈じゃなくて、本能が総司さんのそばを望んでる。



「礼央が思ってるほど、総司さんたちは悪い人じゃないよ」


たとえヤクザでも、あたしには優しい。

家族だといった、組員にも優しい。



そんな総司さんのそばが、とても落ち着くから。



「なんでアイツんとこなんだよ」


「……え?」


礼央は眉をよせた。