愛の手


「全て話すから、聴いてくれるか」

「ぜんぶ?」

かすれた声が、ドキドキと鼓動を速めた。

うなずいた総司さんの髪が、耳にかかった。

くすぐったくて身じろぎたかったのに、あたしは離れたくなくてゆっくりと背中に手をまわした。



「……もう離さない、って約束してください」

「あぁ」

「あたしをそばに置いてください」

「もちろんだ」

「あたしをオモチャだと……思わないでください」

「わかってる」


「いつものように、優しくしてください」

「……してる」


「……知ってます」

「ならいい」

殴られた恐怖も、なにもなくなった絶望感も、全てぬぐってください。

あたしの全てを、うけとめてください。



「それなら、ちゃんと聞きます」


そういうと、総司さんはあたしの髪にそっと口をよせた。

ありがとう、といっているようだった。