愛の手


まねかれたのは、総司さんの腕の中。

「冷たいな」

「……海風にあたってたので」

あたしをあたためるように、ゆっくりと背中をなでた。

摩擦でだんだんあったかくなってくる体。



ううん……

摩擦のせいじゃない。




総司さんの鼓動に、緊張してるから。





「悪かったな」

「……なにが、ですか?」

「お前を、突き放した」

悔いてるような声が、あたしの耳に直接届く。

総司さんが近くにいる、ってわかるくらい、耳元で。



あたしは否定するように首を横にふった。


違うよ、って……

ダイキライなんて、思ってもいない言葉で傷つけたのはあたしだよ、って。

突き放したのは、あたしだよ、って。



素直じゃなくて、ごめんなさい、って。