『はい』 電話口で、短い返事。 仁さんらしくて、あたしはちょっと笑いそうになった。 「仁さん? もう迎えきちゃった?」 『いえ、いまから出発しようかと』 時計を見ると、午後三時すぎ。 間に合ったことにほっと肩の力を抜いた。 「仁さんに、内緒でお願いがあるんだけど……」 あたしはイチかバチか、お願いごとをしてみた。