愛の手


ふすまを開けても、騒ぎのおかげで誰もあたしに気づかなかった。


あたしは現実を目の当たりにした。





廊下を走っている組員のほとんどが、血だらけ。


少し離れた部屋から見えるのは、重傷と思える組員が数人横になっていた。






――…どうしたの、これ……?






あたしは考えるよりも先に、足が動いていた。


廊下を走る組員にまぎれて、あたしも走る。





血の匂いが、屋敷に充満した。