愛の手


部屋でおとなしくしようとしても、廊下がバタバタと騒がしい。

本当にネズミなの?って思いたくなるくらい、組員が総出で緊迫した雰囲気をかもし出している。



あたしは見つからないように、そっとふすまに耳をあてた。


バタバタする音が、じかに耳に響いてちょっとうるさい。


『急げっ!!! 戸村のじっさんはまだか!!?』

『急患の手術がもう終わるらしい。迎えの車は送った!!』

『熱湯用意しろ!! あと使ってない布!!』



なにが起こってるの?





会話を聴いても、理解出来ない状況。



ただ理解出来るのは、緊急事態だ、ということ。








あたしはそっと、ふすまを開けた。