愛の手


朝食でお腹が満たされたあたしは、少し休みたいといって部屋にこもった。



昨日泣きすぎたせいか、マブタが重たい。




ふすまを開け放ち、外の風をとり入れた。

不思議と外の風に混じって、お香の匂いが室内に入ってきた。



香水よりもやわらかい、お香の香り。



初恋のヒトとおなじ、お香という種類。

普段嗅ぐ機会がナイため、ここにきてから毎日香るのが不思議でたまらない。



あたしは枕を持ったまま、縁側に腰をかけた。


なつかしい匂い。




そういえば昔、初恋のヒトに助けられたことがあったっけ。

ふと思い出したことに、マブタを閉じた。




初恋のヒト――…

あたしが幼稚園のとき、いつも慰めてくれたヒト。