ファンデーションも丁寧に
延ばし、パウダーで軽く押さえ
手で馴染ませると次は
アイシャドウに移行して
行った。
パールの利いたものは皺を
目立たせてしまうので
マットな肌馴染みの良い
色味を抑えたものを乗せてゆく
口紅も頬紅も、肌馴染みの良い
自然な色が選ばれていた。
『さあ、棚橋様、
出来ましたよ♪
如何ですか?』
おばあちゃんは、老眼鏡を
受け取り、鏡に映る自分の
顔を目を細めながら覗き込んだ
『おやまあ!
これが私かい?!
何だか十は若返った気が
するねぇ‥。』
驚きと共におばあちゃんの
表情がパァ~っと明るく
なった。
『棚橋様、今なら
ソフィア・ローレンにも
負けませんよ♪
お気に召して頂けましたか?』
おばあちゃんは少女の様に
頬を赤らめ、照れ臭そうに
している。
『貴方は魔法使い?
ふふふ、何だか腰痛も
和らいだ気がするわ‥。』
嬉しそうに呟く‥
おばあちゃんは、これまで
息子夫婦と同居して来たのだが
息子に先立たれ、今では
嫁と孫達と一緒に暮らして
いるそうなのだが、嫁は
息子が居なくなると、
態度が一変し、おばあちゃんに
冷たく当たる様になって
行ったらしい。
それから部屋に引きこもり、
老人クラブで愚痴を溢す
事も無く、ひっそりと
過ごして来たらしいのだ。


