『それに…あの人がワタクシの
労を労うだなんて…天地が
ひっくり返っても
あり得ませんわ…。

どうせ若い女の子と一緒に
居たところでも貴方に
目撃されたんでしょ?
それで口止め料として
こんなお金を…。

まったく…社員の方に
こんなところを見られて…
中津田河家の恥曝しだわね!
このお金は貴方に差し上げます

きっと上役である主人の
いかがわしい姿を見て
貴方もショックを受けたで
しょうから…。

これは家庭内の問題です。
ワタクシも父に相談した上で
主人には後でしっかりと
教育しておきますわ…。
では…これで失礼しますわ…
ご機嫌よう…。』

奥さんは去ろうとしたが、
その背中はとても
悲し気だった。

『あの!待って下さい!』

麗子が奥さんの背中に
投げ掛けた。

『あの…メイク…
して行きませんか?

…アタシ、この前、
失恋したんです。
その時、此処のチーフに
メイクして貰ったんです!
そしたら…。

メイクって魔法なんです!
此処を出る頃には気持ちが
軽くなって…。
何て言うか…
新しい自分に生まれ変わった
みたいになって…。
是非!試してみて下さい!』


麗子は自分で何が言いたいのか
解らなくなっていたが
兎に角、傷心の奥さんの
気持ちを和らげて
あげたかったのだ。