『まっ、仕方ないか、
うん、仕方ない。』


独り言を呟きながら彼女は
翌日彼に渡すつもりで作った
ダージリンティーの
シフォンケーキを冷蔵庫に
忍ばせて、学生時代からの
友人、冴子に電話した。


『あっ、もしもーし、
冴子?
ア・タ・シ♪
元気だったあ?
ねぇ、飲み行こ!
うん、今から!
ホント?
じゃ、何時もんトコ♪
うん♪わかった。
待ってるね~♪
は~い。  』


2月14日のバレンタインに
いつもの調子で誘ったら
即効、二つ返事が返って来た。

こんな時に持つべきものは
気の置けない女友達だ!

冴子もバレンタインは
《誘われタイン♪》
だったらしい‥

おっと、失礼!
軽いジャブ。

世間じゃこれを親爺ギャグ
って呼んでる。


二人は待ち合わせ場所に
着くと、そのまま夜の
繁華街へと繰り出して
行った。


そこで彼女は見てはイケナイ
決定的な瞬間を目撃して
しまったのだ!


上司と飲み会している筈の
彼が髪の長い綺麗な女
(ひと)と人目も憚らず
抱き合っているところを‥


ドッペルゲンガーか?


いやいや、
あれは対自分に起きる
現象だし‥


そう、これは
よくある話し‥