「恋の~♪始まりぃ~♪
じゃないの?んんん?」

麗子's悪魔がニンマリ
しながら鼻歌混じりに
囁き掛ける。


「あなたねぇ、同情と
恋の区別もつかないの?
今は失った恋の喪に服す
べきよ!」


麗子's悪魔を押し退けて
麗子's天使がたしなめる。


《あ゛ーもう!
うるさいっ!
飲むだけだってば!》

今度はチーフに解らない様に
心の中で叫んでみた。


『此処、ここ。
此処で飲もう!
俺の隠れ家♪』


[Saloonローハイド]


いかにもチーフの
好きそうな店名。


麗子はチーフに案内されて
ウエスタンスタイルの
バーの店内に足を踏み入れた。


入り口に入るなり
ジョン・ウェインの
等身大パネルに銃口を
向けられた。


店内には一枚板の長い
カウンターがあり、

背丈を越える高さのサボテンや
星条旗が飾ってあり、

お客さん達も
ウエスタンシャツに
テンガロンハットまで
被って上から下まで
全体がウエスタンな
世界だった。

お客さんによっては
チャップス(乗馬具)まで
着けてる人も居る。

BGMもカントリーロックだ。


何だかアタシの方が
此処では浮いてる感じ…。


『よう!トニー、
久しぶりだな。』


『あっ、サニー、
久しぶり!』


トニー?サニー?


???


トニーってチーフの事?