空 × 空 -secret-

「そういえば、蒼は? 私、さっきまで蒼と話してて、それで」

「ま、待て! 話が見えねぇ!! お前、本当に真空じゃねぇってのか?!」

「え、ええ」

「じゃあ、真空はどこだ!」

「あら? 髪が、ない」

「は?!」

「私の長かった髪が、肘までしか…」


 そう言いながら、律──いや、奏はガラスに映る自分の顔を見つめる。


「私ではない。似ているけれど、私ではない。とすると、この体は……」


 ショーウィンドーに自身を映し、首を傾げる。


「この服、見た事がないわ。この鏡のような透き通った板も、建物も。それから、私と似たこの体。もしかすると、ここは、後の世…? だとすれば、私がこの体に宿った理由も分かる。私の写し身であれば」

「ちょい待て。一人で納得するな。どういう事か説明してくれ」

「つまりですね、この体は貴方のおっしゃる真空という方の体です。中身が違うんです。私は真空殿の先祖に当たる者です」


 一気に説明された空は混乱する。

 真空は天野で、……え?


「真空殿は今、ここにはいません。体はこうしてここに在りますが、中身は多分、平安に在ります」

「平安?」

「私のいた時代です。簡単に言えば、入れ替わったという事です」

「何ぃ?! マジで言ってんのか!」

「ええ、恐らく。何故入れ替わったのかは分かりませんが」

「どうすれば元に戻るんだ?」

「戻れるなら、既にやっています」

「ゔっ。マジかよ…」


 空は落胆した。不思議な話に頭がついていかない。


(何なんだ、一体)


 ただただ、頭を悩ませるのだった。










 相戸蒼(アイド アオイ)と名乗った男に、律は一先ず事情を説明した。

 何故、このような事態になってしまったのかは分からないが、自分が蒼の言う“姫”ではない事。

 本来は970年も先の人間だという事。

 ありのまま全てを話し終えた今、律は恐る恐る上目使いで蒼を見る。


「信じませんよね、やっぱり。変な話ですもんね」

「いえ、信じますよ」

「え?」