用意を済ませて、朝食をとるためにリビングに向かう途中、トイレから出てきた絵里と会った。
「あ、おはよう絵─」
「っま、マナ!!?何!!?この髪!?その制服の着方!?何があったのぉ!!!?」
「………」
ガシッと肩を掴まれて、絵里の目を見開いた顔がずいずいと迫ってきた。
「…あの、私…そんなにひどい?」
絵里の反応が大きすぎて、そんなにも自分が凄いことになっているのかと、もう一度部屋に戻って鏡で確認してこようと思った。
「ひどいってかびっくりだよ!!やれば出来るんじゃん!!」
それ…お母さんからも同じようなセリフを言われたような…。
「"やれば"って、私は"やらされてる"の!!」
「なんでちょっと怒ってんのよぉ??」
まだ私に構いたそうな絵里は押し退けて…
リビングへ行くと、お母さんが調度お弁当を完成させたところだった。
「おはよう2人共、いつもより早いわね」
手際よく動くお母さんは、机に朝食を並べ、さっさと食べろと顎で促す。
今日は洋食で、トーストと目玉焼き。
「……あの、お母さん」
パンをかじりながら、恐る恐る"あの事"を訪ねる。
「何よ?」
「えっと、お弁当のことなのですが…」
昨日のお弁当、…あれはネタですか?ただのウケ狙いだったのですよね?
「いえ…やっぱいいです」
い、言えない。
「何よ…ああそうだ、帰りちゃんと眼科に行くのよ?本当に先生のおかげでマナがまともな人間に近づいてくれて嬉しいわ」
「ははは……」
まともな人間ですと?
…お母さん、今まで娘を何だと思っていたのですか。
「何何何!?マナ、眼科行ってコンタクトにするの!?面白そぉ〜絵里も付いてく!!」
この子はこの子で、見世物を見るような目で私を見るし…。
「眼科行くのは放課後だから、絵里は部活あるでしょ…それ以前に、面白がらないで!!!ついて来るとか有り得ないでしょ!!!」
「ああ!!待ってよマ〜ナ〜!!!」
椅子から勢いよく立ち、絵里の期待の眼差しから逃げるように家を出た。