鍛練場とは、カシェルク領の城を守る兵士たちが自分たちの剣術や馬術を高め磨き合う場所です。
シャナは鍛練場が嫌いでした。
汗くさい男の熱気と、ギラリと光る剣を見ると身体が震えてしまいます。
(何でアリー様はこんなとこに来るんですか〜!?)
半泣き状態でシャナは恐る恐る鍛練場を覗き込みました。
すると、鍛練場の中央を囲むように人だかりができていました。
「これは…?」
シャナが不思議そうにその人だかりを見ていたら、その円に顔なじみの少年兵士であるラジールを見かけました。
シャナはラジールに近づきました。
「ラジール、これは何事です?」
「シャナ嬢!なぜここへ??」
ラジールは驚いた顔でシャナを見ました。
「アリュエイン様を探しているのです。ここにアリュエイン様はいらっしゃいますか?あと、この人だかりは…何があったのです?」
「アリュエイン様!?………あー…。」
ラジールは、困ったような顔をして頬をかき、人だかりに、ちらっと視線を向けます。
シャナはその視線を見逃しませんでした。
「……アリュエイン様はいらっしゃるのですね。」
「…んー…あ、あ―うん。…いるよ。」
低い声を出して唸るシャナに、ラジールは観念とばかりに白状しました。
「アリュエイン様は、今、隊長と稽古してるよ。」
「…!全く!!あれほど剣はもうお使いにならないように言ったのに!」
「まぁまぁ、シャナ嬢。アリュエイン様がそんなの聞くたまじゃないだろ?…にしても、アリュエイン様は本当に公爵令嬢なのかな?あれは…普通の男よりも逞(タクマ)しいというか…。」
感心したようにアリュエインを褒めるラジールをシャナは、キッとばかりに睨みつけます。
「アリュエイン様は正真正銘、カシェルク領の公爵令嬢なんです!!」
そう叫ぶとシャナは兵士たちの円の中へ入っていこうとしました。
「そこをおどきなさい!!アリュエイン様!!」
シャナが円の外から力いっぱい叫びます。
すると、円の中から
「え!シャナ!?」
という声が聞こえてきました。
