サンドラ王宮は、街を見渡せるように小高い丘の上に建てられていました。
強固な石造りの城壁で囲まれた王宮は、カシェルクにある城より一回りくらい大きく、周りは彩られた花たちやシンメトリーに刈り取られた木々の全てがまさに芸術品でした。


「王宮っていうのは、外観からすでに他とは違うなぁ…。」


「アリー様…。私たち、とんでもないところに来てしまったのかもしれませんよ…。」


馬車から降りて、キョロキョロと物珍しそうに王宮を見渡すのはアリュエインで、シャナは不安気に胸に腕をくんで地面を見ています。


「ほら、行きますよ。」


サムールを先頭に、門番に身分証明をして二人は王宮の中へと足を踏み入れました。


王宮の内装は外観にも負けず劣らずの美しさでした。
ゴテゴテした飾りではなく、洗練された美しさにアリュエインもしばし見とれていました。


(こんなキラキラしたところに住むなんて…やっぱり王様たちは僕なんかと格が違うよな。)


ぼーっとしている二人に、サムールが王宮の人と何かを話した後に近づいて来ました。


「アリュエイン様、他のご令嬢たちは既に到着しているようです。これから、皆様と一緒に王様と謁見してもらいます。そこで王子とも出会う手はずとなっています。」


「ふーん、分かった。今から行くの?荷物は?」


「到着したばかりですが、今しか王様の時間がとれません。なので真っすぐ私に着いて来て下さい。シャナ嬢は、あちらにいる侍女頭のメルシーが、部屋まで案内してくれますので、そちらでお待ち下さい。」


「はいはい。じゃあ、シャナ。僕はちょっくら挨拶に行ってくるよ。」


「あ、ア、アアリー 様!!く、くれぐれも粗相のないようにお願いしますよ!?ちゃんと、”私”に言葉を改めて下さいね!」


王様にこれから謁見するアリュエインよりも何故か緊張しているシャナにアリュエインは小さく笑いました。


「あはは、大丈夫だよ。シャナは部屋で待っててね!」


「頑張って下さいよ!」


アリュエインは手を振るとサムールの後に続いて、”王の間”に向かって行きました。