「アリュエイン様、シャナ嬢、そろそろ行きますよ。」
サムールに促されてシャナもアリュエインも王宮へ迎うためにと用意された馬車に乗ります。
「アーリー、どきょゆーの?」
二歳になったばかりのシェムルは、この状況がよく分かっていないのか、ナターシャのドレスを握りしめながら不思議そうに小首を傾げていました。
「シェム、アリーはね、これから少し遠いところへ行ってしまうのよ。」
「しゅぐかえりゅ?」
「えぇ。」
ナターシャは、勿論だというように大きく頷きました。
そこにアリュエインが馬車の窓から顔を出しました。
「皆〜!僕、行ってくる!いっぱいお土産持ってくるから楽しみにしててね!」
笑顔で手を振るアリュエインに皆も寂しそうな顔を浮かべながらも手を振ります。
「アーリー」
シェムが呼び掛けるとアリュエインはニコッといつものように温かい陽だまりのような笑顔を向けました。
「シェムもいい子にしてたら、いっぱいおもちゃとかお菓子を買ってくるからね!」
それを聞いて、シェムルは嬉しそうに
「うん!!」
と頷きました。
「じゃあ、皆!!
いってきまーす!!!」
そして、アリュエインは初めて生まれ育った故郷を離れ、”シークラント王子の五人目の妃候補”として王宮へと旅立ちました。
