にっこり頷くアリュエインに安心したのかナターシャも花のような笑顔を向けました。
ナターシャの笑顔はとても綺麗でアリュエインが大好きなものの一つです。
「でも、アリー。ちゃんと近況は知らせてくるんだよ。」
「分かったよ、フォルトマ兄様。」
フォルトマ兄様も手にハンカチを握っています。
あの時、王宮からの手紙を受け取った日も1番難色を示したのはフォルトマでした。
彼は兄弟の中では特にアリュエインを可愛がっていました。
だから、この話も本当は乗り気ではないのです。
(もし、王子がアリーを妃に選んだとしたら……僕がきっちり挨拶に行かないとね……クス。)
フォルトマは小さくほくそ笑んでいるのに気付いたのはミシェランだけでした。
(フォルの奴…。また腹黒い顔をしているな。…考えていることは分からんでもないが。)
ミシェランもフォルトマほどではなくもアリュエインは可愛い妹だと思っているので、フォルトマの企みを諌めるつもりもなかったのです。
「絶対、連絡するんだよ。」
念をおすフォルトマを怪しく思いながらもアリュエインはこくん。と頷きました。
(フォル兄…。顔が笑ってるのに目が笑ってないよ…!こわいって!)
それからアリュエインは城の兵士や侍女から労いの言葉をもらいました。
「アリュエイン様、おからだに気をつけて。」
「お転婆はほどほどに。」
「剣を振り回してはいけませんよ?」
主に兵士の労いはこんなもので、侍女たちはと言うと…
「「「シャナ、頑張って!アリュエイン様、腕白はお控え下さい!おしとやかに…ですよ!」」」
皆、同じことを言っていた。
それに対して、シャナは目を光らせました。
「私がしっかりアリュエイン様の面倒を見るわ!」
頼もしい言葉に、侍女たちは「よろしく!」と力強く言いました。
(そんなに一斉に言わなくてもいいじゃない〜!)
