「それは、なぜですか!?」
噛み付くような勢いで話す我が子を王様は静かなしかし、どこか威厳を漂わせた目を向けました。
「シークラント。そなたはもう今年で22。そろそろ私に代わり王位を引き継いでもらわなくてはならない。」
「それは…。」
「私ももう歳だ。いつどうなるかわからない。そなたとて、”王族”の誇りや責任を忘れたわけでわあるまい?」
”王族”としての誇りと責任。それをよく解っていたシークラントは何も言えず、ただじっと王様の言葉に耳を傾けていました。
(俺はこの国の王子だ。王族の誇りや責任なら理解してるさ。でも…!)
「それでも…いきなり結婚などと…。」
つぶやくように言って俯いたままの王子を王様は先程よりは優しく見つめました。
「分かってくれ、王子よ。私も王妃もそなたが結婚し、王位をつぐ日を心待ちにしているのだ。……そなたが女嫌いだとしても、妃は娶らなくてはならないのだよ。」
「……!父上、知っていたのですか?」
シークラントは、いつもひた隠しにしてきた自分の気持ちを見破られて驚いたように王様を見つめました。
「ふふふ。皆の目はごまかせても私の目はごまかされぬよ。」
「私もです。」
王様が得意気に笑うと何故か王様の傍らに今まで静かに佇んでいたハルルクも同意しました。
王子様は困ったように二人を見ました。
「…貴方たちには叶いませんね。」
「何故、そなたは女を嫌う?」
「………嫌なのです。女など所詮は私の王子という肩書きに惹かれる。彼女たちは、私がどこかの貧しい農民であれば見向きもしないでしょう。……女ほど愚かで浅はかな生き物はおりません。」
冷たく目を光らせる王子様の言ったことは全て本音で、そのことを王様もハルルクもよく理解していました。
シークラントは強く、賢く、見目麗しい若者です。それも彼が惹かれる要素ではあります。
しかし、1番娘たちが惹かれる理由はやはり”王子”という肩書きでした。
王子様はそのことをよく知っていました。
(女は俺なんて見ていない。”王子”を夢見ているだけなんだ。)
