すると、思いが通じたのかボスは立ち上がり、走り出した。


「…えぇ!?」


傘をその場に置いたまま。


ボス、頭やられちゃったのか?


ゆっくりその傘の元に近づいていくとすぐにその意味が分かった。


「…ねこ。」


そう、そこには猫がいた。


体を濡らした猫に体が冷えるのを少しでも和らげさせようとタオルが巻かれてあり、水色の傘で雨を凌いでいる。


きっと、全部彼がやったのだろう。


あんな怖い顔してるのに
ヤクザだとかいう噂だってあるのに
ノートを一緒に運んでくれたり、傘かしてくれたり。


そんでもって、猫にまでこんなに気を使って。


誰だよ、ヤクザって言った奴。


誰だよ、5秒目があったらやられるとか言った奴。


よっぽど、噂を流した方が怖いわっ。


こんなに気の利いた、優しい人。

滅多にいない。






「…あ。雨、やんだ。」






空はもう雨を降らすことを止め、少しずつだけれど光を放ち出す。







そんな空には、優しい色のした虹が架かっていた。