『……柏原、遅いぞ』


「……」


先生が一歩引き目にある男を注意した。


その言葉を無視し、無言で席につく。


ボソボソ

「…今ごろきたよ、」


ボソボソ

「5限目にボス登場。」


ボソボソ

「相変わらずこっえ~顔。」


ボソボソ

「ばっか、聞こえたらどうするんだよ。殺られるぞ!」



周りの人はこんなことを言ってる。


ボス、と呼ばれるこいつの名は柏原優月。


顔が怖いと言われ、まるでヤクザだと誰かが言った。


そして噂が噂を呼び、肥大して柏原優月がヤクザだとか言ってる人もいる。


……んなわけあるかい!


ただちょっと見た目が怖くて、目付きが悪いだけで皆妄想を膨らませて楽しんでいる。←


「今日はちゃんと登校してんだね、ボス」


「だねぇ」


「相変わらずこっわいねぇ。」

「ん~?そう?」


そう隣で言っているのは私の友達、若園秋葉。


ボスを横目に見ながら私に話しかけてくる。


「……。」


私が適当に返事を返すと、妙な顔つきで私のことをじっと覗き込んでくる。


変なものを見るような顔で。


「…何よ、秋葉」


「ありえない!あれが何で怖くないのよ?」