帝国歴四五八四年、七月二五日。
 突如鳴った電話を、彼女は慌てて取った。

『……洸流……元気にしているか?』
「お父さん、久しぶり。お母さんは?」

『洸流……よく聞け』
 父の声が深刻なことに、今更気づく。

『志を継いでくれ。私たちは終わっても、未来に希望はある。
 王家と、国と、人々の為に。……分かるね?』

「お父さん? 何? どうしたの?」
 だが、答えはなかった。代わって、母の声。

『洸流……赤ちゃんね、男の子だったわ。
 あなたの弟……悠夾(ゆうきょう)よ。忘れないでいてあげて』

「お母さん?」

 電話は、切れた。

 軍艦デルハウスト自爆の報が入ったのは、それから間もなくのことだった。



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