ティードリオス ~わが君にこの愛を~

 ――あの姉……!
 瞬間、ティードリオスは毒づいた。

 嵌められたということは、すぐに分かった。

 検査がどういうものだったのかは、分からない。ただ、目の前にある事実は――
 彼女が、一糸纏わぬ姿だったということだ。他に人はいない。検査用の器具とベッドがあるだけ。

「……殿下」

 すぐに踵を反そうかとも思ったが、先に声を掛けられた。

 自分の顔が熱くなるのを感じつつ、彼は迷わずマントを外し、彼女にかけると、
「すまない、邪魔した。忘れてくれ」
 言って、立ち去ろうとする。

「……殿下。どうしてここに?」
 ――姉の策略で。

 そう言いかけたが、なんとなく、言えば負けのような気がした。

 自分の動悸が、聞こえる。
 何度も言ったことだ。今更、何を……。向こうだって、知っている。
 血が頭に昇るのと同時に、段々と自分自身が分からなくなり――