ティードリオス ~わが君にこの愛を~

『殿下、お願いですからお止め下さい!』
 インカム越しに声が響く。第九期研究者のものだ。ここには、彼の他にはこの二名しかいない。
『殿下が先頭に立つなど……!』

「洸流は出せない。なら、ラインハルトに乗るよりも確実だろう」

『そうじゃありません! ラインハルトだろうが第九期だろうが、殿下が出るのがいけないと申し上げているんです!』

 ティードリオスは、第九期のコックピットにいた。もともと彼が乗るはずだったものだ。彼も搭乗者として登録してある。
 チップを装着していた。起動結果は、洸流ほどではないが、ラインハルト以上のものだ。

『殿下! 殿下は第2王位継承者ですよ!?』
 王太子の失墜によって、王位継承権が繰り上げられた。直系の王位継承者は、ミルドレインと彼だけだ。傍系なら何人かいるが、彼らが王位を継ぐとなれば、大問題になるだろう。