『神聖語で人型を意味するヴィーセンタ、その開発は200年前の王の杖の喪失を機に始まりました』
 テレビのアナウンスが、流れる。

『第一期は、歩行して砲を撃つという程度のものでしたが、世代を重ねるごとに進化を遂げ……』

 くすんだ緑の機体が映し出される。幾分アームが短い。王立歴史博物館所蔵、槇公(てんこう)と、字幕。

『第四期・槇公で、初めての実践投入となりました。以後、このフェルキンドの武力は世界の知るところとなり、オーヴェルトも小国との見解を改めました。このフェルキンドが外交上友好を保っているのは、一度虐げられた痛みを知っているからであり、……』

「…………」
 黙って眺めるうちに、次々と映像が切り替わる。

『そして、第七期、通称レック。迷彩も進化し、機動力と攻撃力で革新を遂げ、以降、我がフェルキンドの主力として知られています。王族専用の第八期、ハイトは、主にミルドレイン殿下のディーンハルトとティードリオス殿下のライ……』

 チャンネルを変えるが、また見覚えのある映像が映った。

 鮮やかな緑を基本にした、杖と翼の紋章が刻まれたヴィーセンタが、王城のバリアを破ったところだ。そのまま、超高速で王城に突入する。

『……の紋章がありますが、情報によるとミルドレイン殿下、及びティードリオス殿下は乗っていらっしゃらなかったようです。ディーンハルトとライトハルトも出ていますし、確実でしょう。一部ソースによりますと、無人機で遠隔操作されていいたとの……』
『……もそも、耐衝撃性、スピードとも尋常じゃありません。人が乗っていたら、きっと圧死していますよ、ええ』
『……初のヴィーセンタ同士の戦闘と言われましたが、この未確認新型は、はっきり言って、まさに、子猫と虎……』