「…どうした?」
その男は、優しくてあたしの心を揺さぶった。
総長ではない。
涙は見せたくなかった。
「あんた誰?」
あたしは涙を抑えながら俯き勝ちに言う。
涙は弱い証拠だから。
「強いね。俺は洋、よろしくな」
強がってるだけだよ。
本当は弱いんだよ。
本当は、温かい胸で泣きたいんだよ。
誰かに助けてほしいんだよ。
心の中は思ってても、自分自身が動かないんだ。
プライドと言うものが邪魔をして。
「そっちは?」
「神山紫奈」
「紫奈ちゃんか。とりあえず、中戻ろう」
男は手を差し延べている。
「やだ」
だって、いやだもん。
涙を見られるのって。
弱い証拠じゃん。
「風邪ひくよ?」
「別にいい」
死んだっていい。
どうせ悲しむ人はいない。
だから、もうどうだっていい。
「…ったく」
洋はあたしに自分の着ている服を被せてくれた。
「…ありがとう」

