「着いたぜ」

「あ、ありがと…」


はぁ…。何だか疲れた…。

五十嵐君にちゃんと掴まってたんだけど、落ちそうになったり、ちょっと道間違えたり…。

危なかったけど、ここにたどり着いた。


「五十嵐君、ありがとう。じゃあ、帰る――」

「栗原、明日も俺ん家来てくれよ?」


…は?

来てほしいの?

も、もしかしてこの人、私に惚れた?

私もまだまだ捨てたもんじゃないなぁ。


「和貴がお前のこと、相当気に入ってるみたいだしな」


……そうですか。

和貴君でしたね。


すっかり、和貴君のこと忘れてましたよ。


「う、うん」

「まぁ、そういうことだから。じゃあな」

「うん。バイバ――。あ-!!」

「何だよ、いきなり。耳痛えし、近所迷惑だろ!?」


五十嵐君は、耳が痛そうに手で押さえてる。

だって、大事なこと思い出したから…。


「忘れてた…。五十嵐君、図書室に忘れ物してたよ」

「……」

もしも~し?

……。


五十嵐君、私が言ったことにピンときてないみたい…。


「えぇっと、このノートと筆箱なんだけど…」

「あぁ。それ、俺のだわ。悪いけど、明日の朝、学校で渡してくれないか?それ、今日使わないし。チャリだから、持って帰るのもダルいし」

「え?あ、ま、まぁ」


はぁ!!?明日でいいの!?

来た意味ないじゃん…。


「それ、中身見んなよ?…それ、明日よろしくな。じゃあな」

「うん、バイバイ」


…はぁ。

マジで来た損じゃん。


しかも、明日家まで行って、ご飯作らないといけないし…。

最悪だぁ…。


五十嵐君のバカやろぉ~!!