数学の授業で、先生は一度も私と目を合わせなかった。


でも気のせいか、私が下を向いてノートを書いている時は、何度も視線を感じた。



先生は一体、何を考えているんだろう。


なんで私のヴァイオリンを聴きたいと言ったの?



私に関わろうとするのは、なぜ?




「井上ー!」


呼ばれていることに気付き、振り返った。


「あ、吉野くん」


「騎馬戦の練習サボる気か?」



もうそんな時間だったんだ。


「サボらないよ。着替えてくる。先行ってて」



私は更衣室に行き、着替えを済ますと、グラウンドに向かった。




グラウンドには、工藤先生もいた。


グラウンドには不似合いな、いつものスーツ姿だった。