「えーその慌てようが怪しいなー。じゃあヴァイオリンのこと?」

「あ、うーん…」

と曖昧な返事をしてみるが、すぐに美優が否定した。


「香奈、それはないよ。ヴァイオリンの調子いいって、先生からもちょっと誉められたんだって。今朝、話してたばっか」


「じゃあ、やっぱり」

と香奈がニヤリと笑う。


あぁ、ヴァイオリンの話するんじゃなかった。


逃げ道を失い、私の顔を見てくる2人に隠す方法は見つからなかった。



「実は…別に恋愛とかじゃなくて、何ていうのかな?ちょっと気になる人がいてね」



「ふーん、それで?」

相変わらずのにやけ顔で続きを催促する香奈。


もう全部打ち明けるしかないかと諦めた。




相手が工藤先生だということだけは伏せて。