「おーい。何してるんだ?」



「わっ」

気付くと目の前に先生がいた。



「俺は化け物か」

と笑う先生は、授業とは違って自然体だった。




「もしかして、今の聞いてたか?」


「あ…はい。あの…」


「盗み聞きするつもりはなかったんです、だろう?」


「あ、はい。ごめんなさい」


「キスの話もちゃんと聞いてたか?」



先生の方からその話題を振ってくるとは思わなくて、わたしはびっくりした。



先生に促されて、私が隠れていた空き教室へ入ると、先生は教室のドアを静かに閉めた。



「あれ、本当だから」

と先生は真っ直ぐに私を見つめて言う。



捉えられた目は、もう逸らすことを許さなかった。