公式の説明を終えた先生は、例題を出した。


「この問題、誰か解けるか?」

答える人はいなかった。


「誰もいないか?」

そう言って教室を見渡す先生と目が合った。


「井上、やってみるか?」


「え…はい」

自信はなかったが、名指しされたらやるしかない。

前に出て黒板で問題を解く。



「こうですか?」

解き終わって、先生に合っているか確認する。


「正解」

そして、小さな声で

「なんだ、苦手なわりに余裕じゃないか」

と私にだけ聞こえるように言った。



何故か少しドキッとした。