放課後、気付くと教室には誰もいなくなっていた。


「はぁ」


自然に漏れるため息。



帰ろうとした時、吉野くんに声をかけられた。


「ため息なんかついて、どうした?」



「吉野くん、まだ帰ってなかったんだ?」


「まあな。てか雨止まないな」


「梅雨だからね」


「だな」



会話が途切れる。



「あ、そういえば吉野くんさ、前に私に何か言おうとしてなかった?」


「あー、あれな…大したことじゃないから」



少し焦りながら言う吉野くんがおかしくて、私は笑ってしまった。


「おい、笑うなよ」


「ごめん、ごめん」


「でも良かった。井上が笑ってくれて」


「え?」


「井上、今日なんとなく元気なかったから。何かあったのかとか思って」


「そんなことないよ」


「工藤と何かあったんだろ?」