ほんの一瞬だったのに、
あたしはまた目が離せない。
誰も何の反応もしないことに、痺れを切らした先輩は、小さく舌打ちして静かに俯いた。
艶のあるハニーブラウンの緩く外ハネして流された髪が、するっと音をたてるようにして宙を滑るように落ちて。
考えるように眉間にシワをよせて、また頭を上げた。
と
同時に、視線がぶつかった。
……その眉を寄せた表情は、髪に邪魔されて、あたしの角度からしか見えなかっただろう。
「東堂梓」
「は、はい…」
本当は気恥ずかしくてすぐに目を離してしまいたいけど、何故かそれができない。
超能力みたいに、惹かれて離れない。
その真っ直ぐな視線に怯む。
「お前、俺の舎弟になるか」
…………。
あたしは静かに、唐突に吐かれたその言葉の意味を考えた。
三雲先輩の……『舎弟』?
「しゃ、てい」
だけど
質問じゃなくて決定事項みたいに呟かれたそれに、でた答えは一つだ。


