「…………」
面白い光景をみたなぁと思う。食堂内にいた人物の多分ほぼ
みんな、一斉に肩が上がった。無論、あたしも。
「“ツ い て る”ってさぁ」
「なにが」
ゆっくり、よく通る声で。
ドスの効いた言い回しに、
改めてまたみんな固まった。
当の本人は、涼しい顔して表情に怒りをみせてない。
……それがまた怖かった。
ザワつきの中で聞こえてきた、あたしが本当に男なら、かなり辛い罵倒。
当然あんな騒々しい中で誰が言ったかなんて検討もつかない。
それに、本気でキレてくれた…
「三雲、先輩……?」
声から勝手に検討したから、間違っていたら謝るしかない。
あたしは恐る恐る斜め真後ろに首をねじった。
割れたテーブルのせいで、傾いた板の上を滑り落ちたカレーは見事にこぼれている。
虫の声で言ったあたしの声が
先輩に届いたかはわからない。
だけどあの時、
『雲ちゃん』と呼ばれてた
『問題児』がここにいた。
……あたしの方なんて一切向かない。


