艶のある細い髪質の、美味しそうなチョコレートブラウン。
後ろの男は軋んだ黒髪。
“昔やんちゃしてて、今はもう染め直してます”感が
はんぱない。
服装がまだそこからぬけきれていないからか。いや、ぬけきる気もないかもしれない。
……て、そんなことはどうだっていいんだけど。
どうやら空気からして、茶髪と髪軋んだ奴はとくに一緒に帰ってきたわけでもないらしい。
仲のよさがまるで感じられない。偶然同じタイミングで帰宅、ってとこか。
「やんなら外でやれ」
不機嫌丸だしの茶髪の言葉には
トゲがあって、それはあたしだけに向けられているような気がした。
(あたし静かじゃん)
全部倉本のせいなのに怒られて、納得いかないあたしはムッとした。
うるさいならシカトして通りすぎた方が結果よっぽど静かに済むじゃんか。
そんなの雰囲気からしてわかんのに、わざわざ立ち止まって突っ掛かってくるなんて
喧嘩売ってるとしか思えない
「…………なに?、黙ってやってっからさっさと通れよ」
年上っぽいけどそんなの知ったこっちゃない。
小声だけど、今のあたしは、静かに頭に血が昇っていた。


