「倉本亮介」
「……うん」
本人の代わりにまた千都瀬が紹介をした。
当の倉本はさっきからムズムズした顔をして、あたしをちらちら見てくる。
「…言いたいことあんなら言ってよ、その目腹立つ」
思わずあたしはそう言ったけどなんだか怖くて、千都瀬の方が見れない。
こんなによくしてもらってるのに、当のあたしがこれじゃあ、千都瀬がどんなに皆のあたしにたいするイメージをよくしてくれようとしても、水の泡だ。
「お前…元ヤンってほんと?」
「……だったら何なの」
「え!?じゃあまじで――
「倉本…、そんな噂信じんなよ東堂もやめ「だって!こんな頭の色してて穴何個も開いててさあっ!―――」
「倉本!!!」
千都瀬が本気でキレた。
別にあたしは何言われてもかまわないのに。
現にあたしだって、男のフリするってなったとき、見た目から考えた。人間、誰でも始めは見た目から入るもんじゃん……
「邪魔なんだけど」
「………那都……」
千都瀬に『ナツ』と呼ばれた男は、バタン!とでかい音をたてて玄関のドアを閉めた。
ある程度成長した四人が入るには狭い靴脱ぎ場。倉本だけがポツンと一段上に立っていて、他はみんなギュウギュウだなんて、超マヌケな図。
照明はオレンジ色っぽい感じで、男の髪色が強調される。


