「? どーしたの?」
ニヘラと笑われても、今のあたしは苛立ったりしない。
「酔っ払いの男の子が星の王子様でシィーち、ち、ち、ち、ちちち」
きょとんとする男の子の七分Tシャツの袖をくしゃくしゃにしながらもあたしは喋り続けた。
「でちちちゅちゅちゅ」
「落ち着いて、深呼吸」
ねっ?と笑った男の子の八重歯にキュンときたから、あたしは自重して自分の頬をビンタした。
「すぅ、はぁ」
「うん、で、
『ち』がどうした?」
「………でこにちゅーされた」
「え?」
超小声であたしが囁くと、男の子は普通に聞き返した。
「……でこに」
「おでこ?」
「キスされた」
「キ………」
固まった男の子を見て、なんか妙に冷静になってきた。
ちゅーごときでなんだ。
(おでこだけど)
今俺は男だ。漢だ。オスだ。
いや漢じゃない。どっちかっつーとボーイ狙いだ。
つまり……
アメリカじゃあちゅーごとき挨拶なんじゃね!!??
そうだ!!
アイツ多分アメリカ人だ!!
ね!Anndou Yuuga!


