「……なんて名前?」 「え……?」 ドキッ 俯きがちに微笑んで聞く王子様が、急に色っぽく見えた。 どうやら見つめられてなんかなくても、彼の魔法は有効らしい。 「東堂…だけど」 「東堂?」 違う、と言われて気づいた。 そうか、『名前』ね。 「……梓」 「『アズサ』…、そう」 上げられた顔に、咄嗟に今度はあたしが俯く。 また王子様に見つめられると思うと……、 きっと心臓がもたない。 「じゃあ『アズサ』ちゃん」 小さな間があく。 王子様はゆっくり話す人だ。 ……おかげで魔法が効きやすい。