「とりあえず、あたし部屋行けたんだ…」
ズキッ
「痛っ」
のそのそ起き上がると、頭が激しく痛んだ。
辺りをよく見回すと、ここは部屋なんかじゃなくて、この独特のにおいからしても、保健室だった。
えっと、確かあたし、あれから宮本さんと色々まわって……
そうだ。食堂のおばちゃんだ。おばちゃんのこと追い掛けてたら……。
脳裏に最後に見た景色が浮かぶ。夕方になりかけの空が向かいの窓から覗いてて、
おばちゃんを追い掛けたら、
おばちゃん、急にすごい勢いで逃げたんだ……。
ゴロン
起こしかけた上半身をまたベッドにゆっくり倒した。
頭がまわってきて、怠さもまわってきたからだ。
だって……。ぶっちゃけもう帰りたいと思ってたし……。
目が覚めて落ち込むのはあの夢以来。
(あ)
始めは、ほんと言うと、ちょっと楽しそうだと思ってて
(やっべ、あたしっつっちゃったし……)
なめてたんだ。
女優でもないのにやり切れるとしか考えてなかった。
だけど、実際今やってみて…
上手くやれるか心配だし、
なんだか怖いよ。
やっぱりあれだね。
「“甘い話には罠がある”………」


