「バイト……って、」
「朝話してたじゃん。あんた今金欠なんだろ?」
目覚め一番にそれか!
てか立ち聞きしてたのかよ趣味わりーな。挨拶するより早く来てたならすぐ声かけろ。
―――とか色々と思いつくより先に。
“バイト”の三文字が、あたしの脳内で煌めきを纏って連呼されていた。
今まで冷たく重たい“金欠”の二文字が未来を暗く支配していたのに、いきなり神降臨って感じに光が射したみたいな。
カチカチと忙しなく動く指。
今はこいつがあたしの輝かしい未来への蜘蛛の糸。
「バイトってどん「どんなバイトでもいい?」
「……は?υ」
「金はかなりイイんだけど、やるって約束してくれないなら内容は話さないから」
「………や、やる!」
「約束したんだから、しばらくは続けろよ、もちろん」
どんな内容の“バイト”でも
表情は柔らかいまま、そう続けられて思う。
(危ない橋……?)
引き返すことは出来なそうだ。でも『金はイイ』らしいから。
「やってやんよ、『金がイイ』なら!」
「…まぁ、働けばそれ相応に割に合う金は入るよ」
それ“相応”に、ね。


