「おうい、いい加減起きねぇかー」
死んだように眠る黒瀬が心配になってきたのか、倉本が声をかけた。
黒瀬は、あの後携帯いじりを止めてから今まで、一時間中ずっと机に突っ伏していた。
よくよく見れば、背中は規則正しく上下している。
てっきり千都瀬が先に気になりだすもんだと思ってたけど。
「寝かせといてあげなよ、疲れてるんだよ」
「…その台詞、デジャブ………」
―――千都瀬の優しさは、あたしの予想を遥かに越えていた。
「ゲリのツボ」
ブスッ
カチ、
「ぶふ、…餓鬼かよ!」
「ああガキですよ、悪いか!」
ゲリのツボって!
しかも、使ったのは指じゃなくボールペン。さすがに“ブスッ”なんて生々しい音(んな音したら確実刺さってるよね)はしなかったけど、そんな効果音を連想したのに実際に鳴ったのはペン先が出たちっさい音だったっていうギャップがね―――
「なにニヤニヤしてんだ、よっ!」
今度は、シュールなツボにハマッて思わず思い出し笑いしてたあたしの脳天目掛けて腕が振り下ろされた。
ガタタタン!!


