「すいません、なんかどこ行ったらいいか分かんなくて、とりあえず知り合った奴に案内してもらって教室いました」
ぺこ、と頭を下げる。
事実半分嘘半分な今のが、この眼鏡の奥には見透かされてそうでちょっと怖い。
なんだかコイツが最強に見えてしまうから余計に嫌だ。
「東堂、頭下げれんだね」
ふ、と広い視野に意識をおいてみると、驚き顔の倉本
「…んだよ」
「いや、うん、ごめんなさい」
倉本に、はぁ?って顔したあたしを見てさも愉快そうに破顔した眼鏡。
(名前何だ)
コイツなら小林の野郎の方が好感が持てる、なんて、あのムカつくゲス教師を異常に高く評価してたことに気づいて嫌悪した。
「まぁ、ゆっくり慣れていけばいいさ。…本音を言えば少し怖じけづいてもいたが、よかった。噂で聞いていたよりも、普通のいい子じゃないか」
(誰もテメェの本音なんざ聞いてねぇよ)
ちなみに最後の一文は、普通胸の内で吐く独言までに留めておくんじゃないか。


