――…十年前 「恭兄ちゃん、ただいまぁ」 疲れを感じさせない明るい声で、あたしは恭兄にあいにいった。 シーン、と静まる広い家。 返事がなかったから、靴を脱いで勝手に家の中に入った。 恭兄に親はいない。 うちが隣に引っ越してまもなく、交通事故で亡くなったらしい。 大きな一軒家だったけど、維持できるくらいに遺産はいっぱい残されてんだって。 だからご両親が亡くなっても、恭兄は隣の家にいた。 恭兄がずっと一緒にいてくれて、あたしは無邪気に嬉しいって思ったっけ…