――…
黒板には、大きく“自習”と書かれている。
教卓に先生の姿はなく、みんな騒がしくならない程度に自由に話している。
誰一人として、勉強はしていない。
あたしもその一人で、ユウちゃんと一樹と三人で机をよせて喋ってる。
「昨日のロードショーみた?
――…アクション映画!!」
「みてない。
どんなんだったの?」
「グワーッ、ギャーッ、ウオォーッ、って感じ」
「わかんないから!!」
一樹とユウちゃんの漫才を、あたしはほほえましく見守る。
この二人がぎくしゃくしなくてよかった、って本当に思う。
「ウタは昨日なにしてた?」
「バイトだったの。一樹がウワーッて騒いでるときね」
「うぅ、悪い。
――…そういや昨日大地から電話きたや。
ウタが攫われた!!って」
攫われたって……

