「なんで?」
「ううん、聞いてみただけ」
誘うまえに、人ごみキライっていわれちゃったよ。
キライなとこにわざわざ連れていけるほど、Sじゃありませんよ。
――…恭兄と違ってね。
そんなことより、といいながら、恭兄の瞳がキラリと光る。
おっ、なにか企んでる顔つき……
予想とは裏腹の言葉が、あたしに向けられた。
「テスト、採点したぞ」
「あぁぁーーー、……聞こえなぁぁーーーーい」
耳を両手にあてて、聞こえないフリ。
ふさいでた両手は難なくもぎとられ、恭兄の顔がぐぐぐっと近よる。
めっちゃ近いんですけどっ。

